リュウグウに残された“衝撃の痕跡”を再现―実験で迫る原始太阳系小天体の衝突の记忆―

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 野口高明 理学研究科教授、松本徹 白眉センター/理学研究科特定助教、三宅亮 理学研究科准教授、伊神洋平 同助教は、広島大学、国立極地研究所、物質?材料研究機構、海洋研究開発機構、大阪公立大学と共同で、小惑星リュウグウに似た「CIコンドライト」という種類の隕石に小惑星同士の衝突を模擬した人工的な衝撃を加える実験を行いました。この隕石は、小惑星リュウグウと似た物質や化学組成を持っています。今回の実験により、リュウグウの粒子で確認された衝突による特徴を再現することに成功しました。

 小惑星リュウグウに代表されるC型小惑星は、水を含んだ鉱物と炭素を含む岩石でできており、その構成は「CIコンドライト」と呼ばれる珍しい隕石に似ていると考えられています。今回の研究では、CIコンドライトに分類される世界的にも貴重な「オルゲイユ隕石」と、南極で発見されたCIコンドライトに似た隕石「Yamato 980115」を使って、隕石が衝突を受けたときにどのような変化が起こるのかを調べました。

 その结果、约4ギガパスカル(骋笔补)以下の弱い衝撃では、岩石にほとんど変化が起こらないことがわかりました。これは、リュウグウの多くの粒子が比较的弱い衝撃しか受けていないという、これまでの説を里付ける结果です。

 一方、4 GPaを超えると、水を含む鉱物や炭素を含む物質が熱によって水分やガスを放出し、ひび割れや破砕が進みます。さらに10 GPaを超えると、岩石の一部が溶けて、泡のような空隙をもつガラス状の物質ができます。これは、水や二酸化炭素が衝撃の熱で抜け出した痕跡です。リュウグウの粒子の中には、ひび割れや小さな空隙を持つガラス状の物質も見つかっていますが、その割合はごくわずかです。今回の実験結果から、リュウグウの表面を覆う砂や小石(レゴリス)の大部分は、強い衝撃ではなく比較的弱い衝撃で壊れた岩石が集まってできた「がれきの山」であるという考えが、より確かなものとなりました。

 本研究成果は、2025年7月26日に、国際学術誌「Earth and Planetary Science Letters」に掲載されました。

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リュウグウ粒子と衝撃実験后の陨石试料に见られる衝突の痕跡(电子顕微镜写真)
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研究者名
野口 高明
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松本 徹
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三宅 亮
研究者名
伊神 洋平
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【书誌情报】
Toru Nakahashi, Masaaki Miyahara, Akira Yamaguchi, Takamichi Kobayashi, Hitoshi Yusa, Masashi Miyakawa, Naotaka Tomioka, Yuto Takaki, Takaaki Noguchi, Toru Matsumoto, Akira Miyake, Yohei Igami, Yusuke Seto (2025). Experimental constraints on the shock history of CI chondrites and Ryugu grains. Earth and Planetary Science Letters, 668, 119559.