田中貴浩 基礎物理学研究所教授および平田聡 霊長類研究所特定准教授が日本学士院学術奨励賞を受賞(2012年2月13日)

田中貴浩 基礎物理学研究所教授および平田聡 霊長類研究所特定准教授が日本学士院学術奨励賞を受賞(2012年2月13日)

※ 受賞者紹介記事を追加しました。(2012年2月17日)

 このたび、田中貴浩 基礎物理学研究所教授および平田聡 霊長類研究所特定准教授が日本学士院学術奨励賞を受賞することになりました。

 同赏は、优れた研究成果をあげ、今后の活跃が特に期待される若手研究者に対して与えられるもので、日本学术振兴会赏を受赏した若手研究者の中から、我が国の学术の発展に寄与することが特に期待される者6名以内が选ばれるものです。

 授赏式は平成24年2月27日(月曜日)に日本学士院で行われる予定です。

田中 貴浩 基礎物理学研究所教授

 田中 貴浩 教授は、平成2年3月京都大学理学部卒業、同7年3月同大学大学院理学研究科博士課程修了、同年4月日本学術振興会特別研究員(PD)採用、同年8月大阪大学理学部助手採用、(平成8年4月同大学大学院理学研究科助手配置換)、同12年4月京都大学基礎物理学研究所助教授昇任、同15年5月大学院理学研究科助教授に配置換(同19年4月准教授)、平成20年4月基礎物理学研究所教授に昇任し、現在に至っています。

 受赏の対象となった研究业绩は「ブレーン重力の研究」です。

 田中教授は、ブレーン世界モデルにおける重力の振る舞いに関して数々の先駆的?系统的な研究を行い、国际的に评価の高い业绩をあげてきました。时空の物理学はアインシュタインによる一般相対性理论に始まり、その古典的な意味での正しさは、観测により既に証明されています。一方、ブレーン宇宙模型と呼ばれる弦理论の新宇宙论によると、时空は4次元を越える高次元であり、その中のブレーンと呼ばれる膜的なオブジェクトこそが我々の住む4次元时空であると予言されています。田中教授はこのような现代的な新宇宙论の展开を进めました。4次元を越える时空内にブレーンがあるとすれば、重力はブレーン外部の次元を通って伝搬できるため、我々の住むブレーン内部の世界で観测される重力はアインシュタイン理论からずれることになります。田中教授は、新たに开発した摂动的な计算方法をブレーン模型に适用し、このずれを正确に与えました。これが、外部次元の存在の証拠を観测的につかまえるための定量的な方法を初めて与えたという意味で、歴史に残る业绩と认められました。

 加えて、ブレーン宇宙が4次元アインシュタイン重力+强结合共形场理论の系と同等であるという仮説をブレーン上のブラックホールに适用すると、静的なブラックホール解は存在しないという予想を発表して活発な论议を巻き起こしました。また一方、重力波についても、连星の一方がブラックホールである场合にもう一方の小质量天体が受ける重力的反作用力の基础方程式を导き、连星の合体から発生する重力波のテンプレートを作成して観测计画の立案に贡献しています。

 これらの研究成果は内外の研究者に极めて高く评価されており、今回の受赏の対象となったものです。

平田 聡 霊長類研究所特定准教授

 平田 聡 特定准教授は、平成8年3月京都大学理学部卒業、同13年3月同大学大学院理学研究科博士課程修了、同年4月日本学術振興会特別研究員PDに採用、同14年5月株式会社林原生物化学研究所類人猿研究センター主任研究員、同20年4月同センター主席研究員、同23年9月京都大学霊長類研究所特定准教授となり現在に至ります。

 今回の受赏は、「ヒトとチンパンジーの比较认知研究による社会的知性の进化的起源の解明」によるものであり、チンパンジーの研究を通じて社会的知性の系统発生的基盘を明らかにするという视点から、独创的な研究成果を得たことが评価されたものです。

 平田特定准教授は、従来の研究にないユニークな社会実験场面を构筑し、チンパンジーにおけるあざむき行动の出现と発展过程、道具使用行动が亲から子へと伝わる文化伝播、协力行动の出现とその际のコミュニケーションなど、一连の斩新な研究によって、ヒトとチンパンジーの社会的知性の类似性と相违性を明确にしてきました。特に、协力行动に関する実験的研究では、国际的に知られる巧妙な装置を工夫して、研究に突破口を与えました。この他にも、世界初となるチンパンジーの脳波计测に基づく自他认知の実証、4顿エコー装置をもちいた母体内环境での胎児の认知机能の発达など、多くの独创的研究を手掛けています。

 これらの成果は一流の国际学术雑誌に掲载され、広く引用もされていることから、今回の受赏の対象となったものです。

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