太阳エネルギーを駆动力として二酸化炭素を取り込む新手法を开発-二酸化炭素の资源化に期待-

太阳エネルギーを駆动力として二酸化炭素を取り込む新手法を开発-二酸化炭素の资源化に期待-

2012年11月20日

 村上正浩 工学研究科教授、石田直樹 同助教、島本康宏氏(同博士後期課程)らのグループの共同研究で、太陽光のエネルギーを駆動力として利用して、二酸化炭素を基本的な有機化合物であるアミノケトンに导入する新しい有机合成手法が开発されました。

 本成果は、2012年11月6日付の独国化学会誌「Angewandte Chemie」に掲載されました。

概要

 本研究チームは、太阳エネルギーを駆动力としてアミノケトンに二酸化炭素を取り込み、环状炭酸エステルを合成する新手法を开発しました。本成果は、太阳光を駆动力として有机化合物に二酸化炭素を取り込むための基础的な方法论を提案?実証したものです。この方法论をさらに押し进めることで、二酸化炭素を炭素资源として活用することができるようになるものと期待されます。

背景

 现代社会は化石资源や原子力に由来するエネルギーに依存して発展してきました。しかし、化石资源の枯渇、地球温暖化、原子力技术に内在する危険性などの诸问题が顕在化するに伴い、大幅な方向転换を迫られています。科学技术の分野も例外でなく、自然エネルギーを有効に利用する新しい技术の开発が强く求められています。一方、二酸化炭素は地球温暖化の原因物质とされ、その削减が地球规模での急务の课题となっています。太阳エネルギーを活用して二酸化炭素を有机化合物中に取り込む手法は、环境?资源両问题の解决に贡献しうる手法として期待されます。

研究手法?成果

 本研究チームは、太阳エネルギーを駆动力として二酸化炭素を取り込む手法として、太阳エネルギーを取り込む反応(明反応)と、二酸化炭素を取り込む反応(暗反応)を连続的に行うことを提唱しました。まず、太阳光を原料に照射して、高エネルギー化合物へと変换します。この変换反応は光エネルギーを化学エネルギーに変え、高エネルギー化合物に蓄积する过程です。続いて、そのエネルギーを駆动力として高エネルギー化合物に二酸化炭素を取り込みます(図1)。


図1:太阳光エネルギーを駆动力とする二酸化炭素の取り込み:概念図

 このモデルケースとして、温和な条件下でアミノケトンに二酸化炭素を取り込み、环状炭酸エステルを得る手法を开発しました。まず、パイレックス製のガラス容器にアミノケトン1を有机溶媒に溶かしたものを入れ、容器内を常圧の二酸化炭素で満たします。この容器を太阳光にさらすと(写真1)、アミノケトンが太阳光のエネルギーを吸収して、高エネルギー中间体アゼチジノール2が生成します。この反応は晴れた日のみならず、曇りの日(写真2)であっても、速度は低下しますが进行します。続いてこの反応溶液に炭酸セシウムを添加して60度に加热すると、二酸化炭素の取り込みがおこり、炭酸エステル3が83%の収率で生成します。得られた环状炭酸エステルには医薬品の原料や燃料添加剤の用途が期待されます。(図2)


(左)写真1:晴れた日における反応の様子、(右)写真2:曇りの日における反応の様子


図2:アミノケトン1への二酸化炭素の取り込み

波及効果

 本研究で得られた成果は、理想的なエネルギー源である太阳光を駆动力として二酸化炭素を取り込むための基础的な方法论を提案?実証したものです。この方法论をさらに押し进めることで、将来的には二酸化炭素の资源化のみならず、太阳光のエネルギーを駆动力として用いる、环境に配虑した精密物质変换が可能になるものと期待されます。

今后の予定

 二酸化炭素の资源化に向けて、二酸化炭素の还元过程を含む分子変换が求められます。本研究では二酸化炭素を取り込むことに成功していますが、二酸化炭素の酸化状态は変化しておらず、今後は还元過程を含む反応の開発に取り組む予定です。

本研究の一部は、文部科学省?科学研究费补助金および旭硝子财団の助成を受けて行われました。

书誌情报

[DOI]:

"Solar-Driven Incorporation of Carbon Dioxide into α-Amino Ketones" Naoki Ishida, Yasuhiro Shimamoto, Masahiro Murakami: Angewandte Chemie, International Edition, 2012, 51, 11750-11752.

用语解説

アミノケトン

アミノ基を置換基として持つケトン(R-C(O)-R'、R, R'はアルキル、アリール基など)。アミノ酸などから容易に合成される。

炭酸エステル

-翱-颁(翱)-翱-骨格を有する有机化合物。

还元 

电子を受け取る化学反応。

酸化状态

原子の电子密度が、単体と比较してどの程度かを示す目安の値。


  • 京都新聞(11月20日 27面)、日刊工業新聞(11月22日 23面)および科学新聞(12月14日 2面)に掲載されました。