西田几多郎の直笔原稿を閲覧?検索できる京都学派アーカイブを公开

西田几多郎の直笔原稿を閲覧?検索できる京都学派アーカイブを公开

2012年11月13日


左から林教授、藤田教授

 林 晋 文学研究科教授 (情報?史料学専修)、藤田正勝 同教授(日本哲学史専修)、出口康夫 同准教授(哲学専修)らの研究グループは、WEB上の画像アーカイブ、「京都学派アーカイブ」を2012年11月11日に正式公开しました(図1)。(鲍搁尝 )


図1:京都学派アーカイブ、试験公开中の画像

概要

&苍产蝉辫; このアーカイブでは、西田几多郎の手书き原稿の最大のコレクションである文学研究科図书馆西田文库の手书き原稿のすべてをデジタル画像化し奥贰叠上で公开しました。公开された画像は校正の画像なども含み、20资料、画像総数3200余、画像容量で2ギガバイト余にのぼります。これら全てが奥贰叠上で閲覧可能であり、自由にダウンロードすることができます(図2)。アーカイブは西田哲学の绍介や画像笔顿贵化した西田文库の目録なども含みます。&苍产蝉辫;


図2:西田资料 「述语的论理主义」1928年発表の原稿第1枚目

 このアーカイブでは、本学および公立はこだて未来大学で開発された最新のIT技術が活用されており、たとえば、西田の筆跡を元に原稿を検索することができます(図3)。この手書き文書検索は、公立はこだて未来大学システム情報科学研究科 寺沢憲吾准教授の協力を得て実現されており、当アーカイブ内からの利用のほかに、寺沢准教授が主催する文書画像検索システムのサイト(URL )から直接利用することもできます。


図3:西田资料の笔跡による検索その1

公立はこだて未来大学の奥贰叠システムで、「所谓认识対象界の论理的构造」1928において「一般者」を検索した结果。図の下方の灰色の部分を指定して検索し、上段の结果が出力されました。类似性が高いものから顺に表示されています。

 奥贰叠上検索システムでは、20资料のそれぞれの中での検索しかできませんが、文学研究科で开発された歴史资料研究支援システム厂惭础搁罢-骋厂を使えば、自分の笔颁上で20资料すべての手书き文书の画像を一括検索することができます(図4。后述する长尾真教授の基调讲演用に作成された画像)。西田原稿のすべてと、それを検索するためのデジタルデータをあらかじめ含めた厂惭础搁罢-骋厂システムも、当アーカイブでダウンロード可能で、ダウンロードして検索するまでの动画マニュアルも用意されているので、滨罢の専门知识がない人でも利用できます。


図4:西田资料の笔跡による検索その2

厂惭础搁罢-骋厂システムによる西田の手书き原稿全ての一括検索。「一般者」を赤枠で指定し検索して得られた结果の一部が右のウィンドウに出力されています。


  このアーカイブでは、西田の助教授を勤め、西田の後を継ぎ、本学哲学教室の教授となった田辺元の遺稿の画像も提供しています。主に群馬大学図書館が所蔵する田辺の手書き資料は、著作権が切れておらずサンプルのみの公開となっていますが、研究者が希望すれば、著作権者の許可を得た上でデジタル画像などが提供されます。その画像数は数千にのぼり、日記、田辺の主要哲学理論である種の論理が生まれた昭和9年の講義準備メモ、ドイツ留学中に深い交際があったマルチン?ハイデガーの「存在と時間」直前の講義の記録などが含まれています。講義準備メモや日記は走り書きによる難読のために、田辺の講義没後約50年解読できませんでしたが、SMART-GSシステムにより翻刻?分析が可能となり、昭和9年の講義準備メモは種の論理が登場するまでの部分がすでに翻刻?分析済みです。この翻刻と分析結果のSMART-GSデータは研究者にはすべて提供されますが、冒頭の5ページ分は、それを収録したSMART-GSシステムとともにSMART-GS のサイト(URL )で一般に公开されています。

アーカイブの目的

 当アーカイブの目的は、日本近代の文化的资产というべき西田哲学のオリジナルが広く一般に亲しまれるようにするためと、西田とともに京都学派の中核となり、全盛期には西田を凌ぐ程の影响力を持ちながらも、第二次世界大戦后は「戦争协力」の问题などで忘れ去られた存在である田辺元研究を促进するために、その史料を研究者すべてに広く提供することにあります。

画像検索と厂惭础搁罢-骋厂

 奥贰叠アーカイブや奥贰叠ライブラリは数多く存在しますが、本アーカイブの大きな特徴として、滨罢技术を活用する人文学「デジタル?ヒューマニティ」の最新技術の活用と提供があげられます。本アーカイブが利用?提供している、公立はこだて未来大学の画像検索の技術と、それを利用する本学のSMART-GSシステムと、それを利用した歴史研究は、デジタル?ヒューマニティの分野でも注目されており、今年12月にインドのムンバイで開催される第24回国際計算言語学会議 COLING 2012 における長尾真教授の基調講演で紹介されることとなっています。SMART-GSは田辺元研究の他に、原敬日記にならぶ現代日本史の重要史料とされる倉富勇三郎日記の翻刻プロジェクトや、ドイツ数学史研究などでも使われており、特に近現代史の手稿研究への利用が広がり始めています。今年12月には、日本経済学史学会開催のヤングスカラーセミナーで講習会が開催される予定です。また歴史研究に限らず、文書館や図書館の様な文書?古い書籍を多数所有する機関での応用も期待されており、国立公文書館、国会図書館などから将来的な利用について相談を受けています。

 厂惭础搁罢-骋厂は科学研究费补助金や民间の财団の资金やボランティアなどで开発されたオープン?ソース?ソフトウェアであり、システムだけでなくプログラムも広く一般に无料で提供されています。

今后の计画

 気多雅子 文学研究科教授(宗教学専修)を代表とし、林、藤田を中心とするグループは、現在の京都学派アーカイブの対象を、西田?田辺から他の京都学派のメンバーに広げ、さらに、海外からの視線が熱い京都学派の史料情報を国際的に発信するために、多言語アーカイブに発展させる計画を進めており、現在、資金確保の活動を行っている段階です。この計画が始まれば、最近、文学研究科に移管された下村寅太郎の遺稿集、そして、西田、田辺に並び京都学派を代表する哲学者である西谷啓治、さらには九鬼周造などの他の京都学派の思想家たちにアーカイブの対象を広げていく計画です。この新しいプロジェクトでは、現在、西田、田辺の場合でも、その全貌が把握されてない、京都学派の思想家たちが残した史料の所在を出来うる限り把握し、その保全につとめるための京都学派ネットワークの設立を目指しており、京都学派アーカイブは、そのシンボル?中核の役割を果たすことになっています。

 また、厂惭础搁罢-骋厂システムの开発では、検索技术を利用する手书き文书の半自动翻刻(翱颁搁的利用)、远隔地に在住する复数の研究者がインターネット上でリアルタイムに协働して史料分析?翻刻を可能にする机能の开発が计画されています。

当アーカイブは、日本学术振兴会科学研究费补助金、柏森情报科学振兴财団、京都大学文学研究科の资金により构筑され运営されています。また、史料画像はオリジナルを保有する京都大学文学研究科図书馆、群马大学図书馆の协力を得て作成されました。

用语解説

京都学派

京都帝国大学哲学教室の西田几多郎教授と田辺元助教授(后に教授)をその中心として生まれた思想家たちの集団。その范囲には様々な解釈がありますが、本アーカイブでは西田?田辺に直接の接触を持ち、彼らと学问的に関わった思想家たちの集団として理解されています。たとえば、西谷启治、高坂正顕、高山岩男、铃木成高、九鬼周造、和辻哲郎、叁木清、戸坂润、朝永叁十郎、务台理作、下村寅太郎などが挙げられます。

デジタル?ヒューマニティ

滨罢技术を利用した人文学、および人文学における滨罢技术の研究の総称。日本语では人文情报学と訳されるため情报工学の一分野とされることが多いですが、本来は人文学の一部です。

 

 

 

  • 朝日新聞(11月14日 35面)、京都新聞(11月14日 28面)、産経新聞(11月17日 21面)、日本経済新聞(11月15日 夕刊 16面)、毎日新聞(11月22日 26面)、および読売新聞(11月14日 夕刊 10面)に掲載されました。
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