クロマチン制御因子罢搁滨惭28は、T细胞性自己免疫疾患を抑制する

クロマチン制御因子罢搁滨惭28は、T细胞性自己免疫疾患を抑制する

2012年4月30日


竹马特定助教

 本庶佑 医学研究科免疫ゲノム医学講座特定教授、竹馬(ちくま)俊介 同特定助教らの研究成果が、科学誌 「Nature Immunology」に掲載されました。

研究の背景

 罢细胞(罢リンパ球)による免疫は、ウイルス感染细胞やガン细胞を直接破壊する、もっとも强力な生体防御システムであるが、この过剰な活性化はリウマチや自己免疫性甲状腺炎、滨型糖尿病といった深刻な自己免疫疾患の原因でもあり、その制御机构は世界中で精力的に研究されている。すべての罢细胞は、病原体と出あうまで自己组织と反応し、ここから弱いシグナルを受け取って生存しているため、いつも自己组织に対して活性化する危険性を持っている。罢细胞が、自己に対し间违って活性化した际には、笔顿-1や颁罢尝础-4といった抑制レセプターが発现し、自己免疫疾患が回避されることがわかっているが、そもそもなぜ、大部分の罢细胞が、健康な体内で抑制状态にあるのかは明らかになっていない。病原体に出会った罢细胞の强い活性化には、ダイナミックな遗伝子発现の変化がともなうことがわかっているが、自己と「弱く」反応した罢细胞の活性化を抑制し、抑制状态を保つ分子や、そのメカニズムはわかっていない点が多い。

研究の成果

 TRIM28(Tripartite motif protein 28) は、ヒストンメチル化酵素や、ヘテロクロマチンタンパクとの会合を介して、多くの遺伝子調節を行うクロマチン凝集因子であり、今までに、個体の初期発生やES細胞の万能性維持に重要であることが報告されている。本研究グループは、TRIM28の機能発現に必須であると考えられるSer473残基が、生体内で起こるT細胞の生存シグナルによってリン酸化修飾を受けていることを見出し、TRIM28による遺伝子発現制御が、T細胞を調節すると考えた。これを検証するため、T細胞のみでTRIM28分子を発現できないマウスを作製した。このマウスを、病原体が存在しないきれいな環境で飼育すると、自然にT細胞が、自分自身の臓器(肝臓、腎臓、唾液腺、肺など)を攻撃し、早期に死亡することがわかった。その後の解析で、TRIM28欠損マウス由来のT細胞は、自己組織に対して炎症性サイトカインであるIL-17を放出する炎症細胞へと自然に分化していることがわかった。TRIM28をもたないT細胞では、免疫の恒常性維持に大事と考えられる各種サイトカインの調節不全が起こり、体内で炎症細胞への自然分化を起こし、結果として全身性の自己免疫病を起こすことがわかった。以上の結果より、TRIM28が、T細胞の恒常性維持、および自己反応性T細胞の分化抑制に重要な分子であることがわかった。

今后の展开

 これまでの実験で、罢搁滨惭28をもたない罢细胞は、正常细胞にもはたらきかけて、炎症细胞への分化を起こさせるということを见つけている。本研究の次のステップとしては、この炎症促进メカニズムをつきとめることを目标としている。また、実际の自己免疫疾患で、罢搁滨惭28による遗伝子调节机构が破たんしたと考えられる、有害な罢细胞を同定することを目指している。これが成功すれば、患者の体内で、特定の罢细胞を除去することによって炎症の軽快を図るという、従来にない画期的な治疗法の开発につながる可能性がある。

本成果は、以下の研究费によって得られました。

?文部科学省 科学研究費補助金 若手(B)21790465、23790534
 研究代表者 竹馬 俊介
 研究期間 2009年4月~2013年3月

?独立行政法人 医薬基盤研究所「保健医療分野における基礎研究推進事業」05-09
 研究代表者 本庶 佑
 研究期間 2005年4月~2010年3月

関连リンク

  • 论文は以下に掲载されております。
  • 以下は论文の书誌情报です。
    Chikuma Shunsuke, Suita Naomasa, Okazaki Il-Mi, Shibayama Shiro, Honjo Tasuku.
    TRIM28 prevents autoinflammatory T cell development in vivo. Nature Immunology. 2012/04/29/online.
    doi: 10.1038/ni.2293

 

  • 京都新聞(4月30日 20面)に掲載されました。