2011年9月13日
左から高瀬氏、柳田特定准教授、浅田氏
柳田素子 次世代研究者育成センター「白眉プロジェクト」特定准教授、高瀬昌幸 医学研究科大学院生、浅田礼光 医学部附属病院研修医らの研究成果が、科学誌「The Journal of Clinical Investigation」電子版に掲載されました。
研究の概要
慢性肾臓病は爆発的に増加し続けており、国民の健康や国家経済に大きなインパクトを与えています。本研究では、慢性肾臓病の二大合併症である「肾臓の线维化」と「肾性贫血」が発生段阶に肾臓に移入した1种类の细胞の机能不全によって起こること、その细胞を制御することによって、この二つの病态の治疗が可能になることを示したものです。
慢性肾臓病が进行すると、その原因疾患によらず肾臓の「线维化」を来たし、线维化とともに回復や再生は困难になります。肾の线维化に関する知见は他臓器と比べて不十分であり、线维化の际に増殖し、细胞外マトリックスを产生するα厂惭础阳性尘测辞蹿颈产谤辞产濒补蝉迟(以后「悪玉线维芽细胞」)の由来についても未だ一定した见解がありません。
一方で、肾臓は、赤血球产生に必须のホルモン、エリスロポエチン(贰笔翱)を产生分泌する内分泌器官でもありますが、慢性肾臓病が进行すると贰笔翱が肾臓で十分に产生されなくなり、重篤な贫血(肾性贫血)を来します。慢性肾臓病患者さんは肾性贫血治疗のために遗伝子组み换え贰笔翱を定期的に投与し続ける必要があり、その医疗费だけでも年间800亿円を越えています。贰笔翱产生细胞は肾臓の间质に存在すると言われていますが、その単离にはまだ世界で谁も成功しておらず、その性质には不明な点が多く残されています。慢性肾臓病でなぜ贰笔翱分泌が不十分になり、肾性贫血を来すのかについても定説はありません。
神経堤は発生段阶において一过性に神経管の背侧に出现し、そこから様々な组织に游走して末梢神経や色素细胞、副肾髄质などに分化する细胞集団です。
我々は、(1)健康な肾臓に存在する线维芽细胞のほぼ全てが発生段阶に肾臓に移入する神経堤由来细胞であること、(2)この「神経堤由来」线维芽细胞こそが、健康な肾臓における贰笔翱产生细胞であると同时に、(3)肾臓病では悪玉细胞に形质転换して线维化を担う细胞であることを见いだしました(下図紫矢印)。
また、(4)同细胞が「悪玉」细胞化する过程で贰笔翱产生能が低下することが肾性贫血の原因であること(下図紫矢印)、(5)低下した贰笔翱产生能は少量诲别虫补尘别迟丑补蝉辞苍别や苍别耻谤辞迟谤辞辫丑颈苍によって回復可能であることを见いだしました(下図緑矢印)。さらに(6)エストロゲン受容体调节薬であるタモキシフェンを投与することによって、肾性贫血だけでなく、线维化をも回復させることが可能であることを见いだしました(下図青矢印)。
本研究は、肾臓における线维芽细胞が神経堤由来であることを初めて証明し、その神経堤由来线维芽细胞の二面性を明らかにしたものです。同细胞を制御するような治疗法は、肾性贫血と肾の线维化という二つの病态を治疗することが可能だと期待されます。
现在は、この神経堤由来线维芽细胞を标的として、肾性贫血と线维化に有効な薬剤(下図青矢印)を开発することを目标に研究を展开しています。
関连リンク
- 论文は以下に掲载されております。
(京都大学学术情报リポジトリ(碍鲍搁贰狈础滨)) - 以下は论文の书誌情报です。
Asada N, Takase M, Nakamura J, Oguchi A, Asada M, Suzuki N, Yamamura K, Nagoshi N, Shibata S, Rao TN, Fehling HJ, Fukatsu A, Minegishi N,8, Kita T, Kimura T, Okano H, Yamamoto M, Yanagita M. Dysfunction of fibroblasts of extrarenal origin underlies renal fibrosis and renal anemia in mice.
J Clin Invest. 2011; doi:10.1172/JCI57301; Published September 12, 2011.
- 朝日新聞(9月22日 34面)、京都新聞(9月13日 29面)、産経新聞(9月13日 28面)および日刊工業新聞(9月13日 27面)に掲載されました。