第25代総長 松本 紘
新年あけましておめでとうございます。
&苍产蝉辫; 昨年には本学颈笔厂细胞研究所长の山中伸弥教授のノーベル生理学?医学赏の受赏という喜ばしい出来事がありました。これに関连し、学问についてすこし考えてみました。世间一般には「科学の世界」と「非科学の世界」という二律背反する世界があると思われています。科学の世界は论理が贯彻しうる、説明されうる世界、一方、非科学な世界は论理に基础をおかない、荒唐无稽な作りごとの世界という二分论です。しかし、その境目はそんなにはっきりしたものではありません。
例えば、时间は一律に流れることは19世纪までは科学の常识でした。20世纪になり、その常识を覆した人がいます。有名なアインシュタインです。彼は惯性系によって时计の进み方が违うと唱えました。一方、世界各地の昔话や神话にはいくらでもそういう话があります。竜宫城にいった浦岛太郎はその一例です。科学者はそんなものはただの嘘话と思い、鼻で笑っていました。ところがアインシュタインは自分の头で考えて、质量も変わる、时间の进み方も変わる可能性があることに気がついたのです。それは非科学といわれた世界を科学に持ち込んだ例のひとつです。
実は、山中教授の话も同じような话なのです。细胞において1回时计の针を戻し、元の状态、干细胞としてあらためて多様な展开を可能とするということは素晴らしい着想です。しかし、この话は昔だったら「非科学」的といわれていたに违いありません。実はこれは非科学ではなく、「未科学」だったのです。そして、それを非凡な実験构想に基づき「科学」として开花させることができたのです。「未科学」の世界を「科学」の世界に取り込む。つまり科学の领域を広げて、「未科学」の世界にチャレンジしていく、こういうことが研究者にとって最も重要な仕事のひとつです。これを山中教授がなし遂げられたことが世界に认められたことが私にはとても嬉しいのです。そして、本学の研究者のみなさんに「未科学」を「科学」にするということにチャレンジしていこうかなとぜひ思っていただきたい。「未科学」を「科学」の世界に取り込むというチャレンジこそが京都大学の学问としてふさわしい。そんなことを考えました。
前置きはこのくらいにして、以下では、新しい年を迎え、昨年1年间の大学の动きを振り返るとともに、今年の重点施策のいくつかをご绍介し、京都大学构成员の忌惮のない意见と必要となる今后の各种活动への一层の参加と协力をお愿いしたいと思います。
1.教育および入试改革に関して
まず、学部教育、とりわけ中教审答申等で要请されている学士课程教育の质保証に関して、各学部のミッションに适合した教养教育と専门教育からなる4年一贯の学位プログラムの构筑と実施に向けて、学生の意见调査を踏まえ、高等教育研究开発推进机构のシステム委员会においてカリキュラム改革の基本方针を策定し、平成24年度に群の大括り化と顺次性のある科目体系の整备ならびに各学部の卒业要件の改正を行いました。
また、全学共通教育実施体制等特别委员会を设置して、実施责任体制を抜本的に见直し、全学共通教育の企画、调整および実施等を一元的に所掌する全学责任组织「国际高等教育院(仮称)」の设置を决定するとともに、全人教育の理念のもと、国际高等教育院の组织と実施概要がまとまりつつあり、次年度中に详细设计を终える予定です。
大学院教育改革の拠点であるリーディング大学院プログラムに関しては、昨年度のオールラウンド型と复合型の各1件に続き、复合型2件が本年度新规に採択され、併せると4件となりました。さらに、新大学院「総合生存学馆(思修馆)」の设置が认可され、リーディング大学院プログラムならびに研究科横断教育を全学的に支える体制が整いつつあります。
そのために、近隣の旧京都市左京総合庁舎跡地を购入し、教育研究施设栋を平成26年8月竣工を目途に建设するとともに、合宿型研修施设2栋を整备するなど、教育环境の充実を図ることとしています。
教育の国际化への対応に関しては、その根干となる学位制度について、大学院におけるダブルディグリーのガイドラインを策定するとともに、学部生の海外留学の促进に向けて留学休学中に留学先で取得した単位の认定についての検讨を开始、次年度中に制度整备を行います。なお、グローバル化に伴う英语実运用力の向上をはかるために、専门を国际舞台で発挥できる英语运用力育成プログラムを后期より开始しました。
高大接続については、昨年度の大阪府教育委员会との协定等に引き続き、1,000名规模の高校生との対话集会である大阪サイエンスデイにおいて総长讲演を行うとともに、全国5か所で交流会を开催する等、高校教育现场との接続を强化しました。
本学における入試改革については、過度の受験競争を是正し、グローバル型の人材育成に向けた「京大特色入试」の実施案の策定に着手、平成28年度ないし29年度から多くの学部で導入すべく、また入試改革と高大接続を拡充すべく、「入試改革検討本部」を新設しました。同時に、RU12大学における入試改革?高大接続WGの幹事校を本学が務めるなど、全国的な連携の中で入試改革を推進していきます。
2.研究に関して
総長就任時以来の懸案事項であった研究専念環境の実現について、多岐にわたる研究支援を研究者に代わって行う8名のU RA(University Research Administrator)からなる 学術研究支援室を発足させ、さらに20名以上を目指し今後URAを採用し、研究環境の整備に努めます。
また、国际化を强力に推进するため、9月より若手研究者の留学を后押しする「ジョン万プログラム」を発足させました。研究者を対象にした公募では、8名の研究者への留学支援と研究者が抜けた后の研究室への支援2件が採択されました。今后は、研究支援体制の整备、研究者の留学支援を一层精力的に进める所存です。
国际交流については、第2回の日独6大学学長会議(京都大学、大阪大学、東北大学、ハイデルベルグ大学、ゲッチンゲン大学、カールスルーエ工科大学)を3月末本学で開催し、学生交換、学術交流の話を進めました。また、海外における京都大学の存在感を高めるため、延期にはなりましたが、11月末に北京大学で「京大の日」を企画しました。また、本年1月10、11日には英国ブリストル大学で、本学から、13の分科会に80名程度が参加するジョイントシンポジウムを開催します。これにより世界各国に交流の輪を広げ、「世界をリードする京都大学」としての地位の確立を目指したいと思います。本学は従来国際関連事業を積極的に展開してきました。今年は、その活動が効率的に展開できるようにオーガナイズし、今後を見据えた国際戦略を明確化したいとも考えています。
3.社会贡献
社会贡献の一つの柱である产学连携としては、产学连携の共同研究の开拓と推进、大学の技术移転、知的财产の确保と移転および产学连携の国家プロジェクトの推进とこれらに関わる契约等の法务関连业务があります。年间844件の共同研究および年间500件(外国出愿を含む)を超える出愿(特许保有数(出愿中を含む)は2,000件を超えました)により、平成23年度実绩で、平成23年度の特许権実施等収入が约2.2亿円で全国大学1位になりました。これは平成19年度の20位(约910万円)に比べると飞跃的な进歩です。
平成25年は「科学技术イノベーションの推进に向けたシステム改革」として平成25年度概算要求で示されている「センター?オブ?イノベーション(颁翱滨)」(产学マッチングファンド)の获得を计画しているとともに、京都市?京都府と连携して地域イノベーションを进めるとともに、けいはんな学研都市への展开も进めます。さらに、共同研究および技术移転に関してはグローバル化を进め、ヨーロッパ?米国および东南アジア各国の大学?公司へと展开します。
附属病院は本学の社会貢献の重要な担い手で、世界トップクラスの医育機関となるべく努力をしてきました。今年は、最先端医療機器の開発?マネージメントのための人材育成の場としての「最先端医療機器臨床研究センター」、iPS 細胞を用いた難病の研究?創薬や再生医療を目的とした「iPS細胞臨床開発部」、臨床研究の全国拠点として認定された「臨床研究中核病院」などを中心に、最先端の医療の創生を目指して社会に貢献したいと考えています。
渉外活動としては、京都大学ブランドの構築に向けて、有効なアウトリーチ活動、戦略的な広報媒体として、3月に、卒业生を中心とする大学支援者との連携強化、公開講座等による情報発信や地域連携等を網羅的に紹介し、大学支援風土の醸成を図るための「京都大学ファンブック」を作成、9月には、朝日新聞出版と企画協力し、本学の教育?研究?社会连携の取組をダイジェストに紹介した「京都大学 by AERA 知の大山脈、京大。」を出版、さらに6月には、本学ホームページに試行的に「Facebook」を導入して、新たな戦略的情報発信の強化を行いました。今後も「京大らしさ」を鮮明にアピールし、将来的な基金獲得に繋げていくため、戦略的な情報発信事業の充実を行う所存です。
4.大学运営に関して
财政は昨年に引き続き厳しい状况にありますが、「强い京都大学」であり続けるために、教育研究组织の大改革に取り组んでいます。学外有识者のご协力を戴きながら、各部局の考えを闻きつつ、今年の3月末を目途に全ての部局の改革计画とロードマップを定めます。
また、昨年、事务改革に着手しましたが、今年4月を目処に共通事务部を立ち上げ、事务の効率化を図り、业务の合理的な缩减を図ってまいります。
未来を见据えた机能强化のためには、必要なところに必要な资源を投入していく必要があります。厳しい财政状况下では、教职员の定员を年次计画に従って削减せざるを得ませんが、同时に、措置すべきところに适切に教职员を再配置するシステムを构筑し、机能强化を図っていきます。
やる気のある人达に顽张っていただくための工夫もしています。昨年、総长および部局长による教员表彰制度を作りました。教育、研究、社会贡献等の活动において顕着な业绩を挙げた本学の教员を表彰することにより、教员の一层の活性化を図っていきたいと考えています。
财务的な侧面では、现在の国の厳しい财政状况の中でも、将来にわたり强い京都大学であり続けるため、25年度予算の编成に向けて、大学改革に向けたガバナンス强化の一环として、现行の予算配分方法の抜本的な见直しを行っています。
本学では、これまで竞争的资金等不正防止计画等を定め、适正かつ适切な会计経理の确保に努めてきたところですが、昨年、一部に不适切な経理の実态が明らかになったことは诚に遗憾です。係る事案が二度と発生しないよう、更なる公的研究费の不正防止のための対策を讲じるとともに、教职员への周知?启発と意识の高扬に取り组んでいく所存です。
平成18年の他大学における公的研究费不正使用问题発覚を契机に、本学においても検収センターを设けるなど、公的资金の不正使用防止に向けて动き始め、この间各部署に分かれて个别に対応していたところですが、近时の社会の动きを见据え、个别対応だけではなく、大学全体としてコンプライアンス事案に対応している姿势を明确にする必要性を认识して、10月に法务?コンプライアンス対策室を立ち上げて担当副学长を新设し、関连规程も整备しました。
今后の课题は、従来个别対応に由来する各部署関连规程と、新しい「京都大学におけるコンプライアンスに関する规程」および関连规程との整合性の検証と改善、そしてコンプライアンス事案の予防のためのさらなる活动です。今までも新任の教职员に向けた研修を行ってはいますが、さらに、特に本规程上の広义のコンプライアンスの内容周知活动が必要と思われます。
5.施设?环境整备について
平成25年度施设整备费関係の概算要求の本学にかかる状况としては、病院东构内の総合先端基盘研究栋、吉田キャンパスのライフライン再生、耐震补强および机能改修や笔贵滨事业等の継続事业6事业の合计20事业となっています。
今后1年间に実施を计画している目玉事业としては、吉田南构内の吉田寮?食堂?集会所整备、左京区役所跡地の総合生存学馆(思修馆)および全学共用の施设整备、医学部附属病院の滨期病栋等です。また、欧米先进大学で取り组まれているサステイナブルキャンパスを本学においても推进するための事业展开を计画しています。
なお、社会的関心の高い吉田寮?食堂?集会所整备について少し详细を补足すると次の通りです。まず、新栋(100名+α规模、7亿6千万円)は现在设计中です。埋蔵文化财调査と京都市との协议を5月末までに终え、8月に工事着工し、平成26年秋に竣工する予定です。
次に、学生集会所(6亿4千万円)を现在设计中であり、平成26年秋に竣工する予定です。ただし、工事期间中の练习の代替施设については现在协议を行っているところです。
最后に、吉田寮现寮(200名+α规模、18亿円)は遅くとも平成25年4月に设计を开始し、平成27年度中の竣工を予定しています。现在は、基本的な部分(构造、费用、期间など)について施设部と学务部で连日协议しています。
昨年行った事业では、施设整备补助金で150亿円以上の事业を発注したほか、学内経费でも27年度までに耐震化を完了する目标をたて第二期重点事业による耐震化の加速、本部构内交通安全対策事业(驻轮対策)などを実施するとともに、环境に関するシンポジウム「京から始める省エネ?省颁翱2の新たな展开」を开催しました。
また、桂キャンパスは、工学(罢别肠丑苍辞濒辞驳测)と科学(厂肠颈别苍肠别)が融合する「テクノサイエンス?ヒル」と位置づけられ、产官学の连携による、国际水準の卓越した教育研究が着実に展开されてきています。昨年の秋、工学研究科物理系施设整备事业(笔贵滨事业)による工学研究科物理系専攻の建物が竣工し、现在、移転作业が行われています。2003年の化学系専攻および电気系専攻の移転から约10年の歳月を要して、ようやく工学研究科の桂キャンパス移転が完了することになります。このたびの移転により、4,000名近くの学生、教职员が桂キャンパスに集うことになり、教育研究の拠点として、一层の賑わいを见せるものと期待しています。ただし、残念なことに、スペースの问题で物理系専攻の一部がなお吉田キャンパスに残ります。関连施设や顿クラスター予定地の整备、アクセスの改善など、まだまだ课题はありますが、今后も、引き続きキャンパスの环境整备を推进していく予定です。
なお、现在継続中の事业ではありますが、农学研究科附属农场(高槻)においては、移転等に係る基本协定を缔结するとともに、平成28年4月からけいはんな学研都市の木津川市の新农场で教育?研究を开始する予定としています。これにより、最先端の知识と技术を习得した将来の农业を担う人材の育成や、食粮?环境?エネルギー问题の解决に向けた次世代の农业技术の开発等が期待されます。
6.むすびに
今年も大学を取り巻く社会情势を见据え、魅力?活力?実力ある京都大学の実现にむけて真挚に大学运営に取り组んでいきたいと思います。构成员のみなさんの一层の参加と协力を重ねてお愿いいたします